会長挨拶

会長挨拶

  井ノ山 正文(特定非営利活動法人ふくしネットにいざ代表理事・教育環境研究センター代表)

 この度2025年7月の総会で本会会長を拝命しました井ノ山正文です。同時に選出された23名の新理事とともに、これから三年間本会の運営を担っていく所存です。
 さて、本会は「カウンセリング心理士会」と呼称を改めてから四年が経過しました。この間、私達を取り巻く社会環境も様々な変化がありました。一つはコロナ禍でした。2019年12月から2023年5月までの期間に小さな子から高齢者まで日常生活を揺るがすような日々を過ごしました。日本赤十字社は、2020年3月に「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために~」として「第一の感染症は病気そのものです」「第二の感染症は不安と恐れです」「第三の感染症は嫌悪・偏見・差別です」との提言をしました。感染拡大の中で日本赤十字社の提言が現実化した経験をお持ちの方も多いと思います。経済的な問題を抱えながら過ごされている方々も多く、社会的な不安は継続しているのではないでしょうか。
 また、生成AIを始めとした情報環境の変化も社会的経済的な側面で大きな影響を与えています。2022年のChatGPTの登場により、AIへの注目は一段と高まり、テキストベースの翻訳や文章要約から始まり、画像や動画の生成へと多岐にわたる分野で活用されるようになりました。様々な専門領域における知識や問題解決能力も向上しています。これは、産業領域では作業効率や人材活用等にも影響を与えると考えられます。
 かつて、パーソンズが1909年「choosing a vocation(職業の選択)」でアメリカの若者たちに語り掛けた社会状況と隔世の感があります。
 しかしながら、時代が変化してもパーソンズが示した「自分にふさわしい職業選択」「自己分析しかつ指導をうけること」等は現代においても重要な観点です。どこに「アンカーを下すか」は、とても大切な課題でもあり、産業領域に限らず多くの分野で取り組むべき課題だと思います。
 このような視点から考察すると以下のことが重要な視座となります。「カウンセリングは心理療法と共有する側面もありますが、そのウエイトは個人・集団・組織の成長発展と問題発生の予防にあると考えられます。それゆえ現今は産業、教育、福祉、司法、厚生、医療等の各分野に広く用いられ、ますます重要性が認識されてきています。それにこたえ、本学会では、カウンセラーの資質の向上の為、学会認定カウンセラー制度をととのえており、各界から、この制度に対する期待がよせられています。」(日本カウンセリング学会HPより)
 社会的価値が変動し揺らぐ中で、カウンセリング心理士がどのようにその専門性を活かしていくのかが増々大切になっていると考えます。ジョージ・エンゲル(George Engel)が1977年の論文で提唱したところから発展した人間を総合的・多元的にみる新しい医学観である生物-心理-社会モデル(bio-psycho-social model)、2001年5月にWHO総会で採択されたICF(International Classification of Functioning, Disability and Health, 国際生活機能分類)で示された「生活機能モデル」は、生活機能は影響する「背景因子」(「環境因子」「個人因子」)の分類で構成されるとしました。 健康状態は個人要因だけではなく環境要因も影響を与えるとされました。
 私たちが上記内容の「個人・集団・組織の成長発展と問題発生の予防」に取り組もうとした時、「環境との折り合い・働きかけ」が求められると考えるのです。これらの課題を検討及び検証するために相互研究(研修)会等があります。
 また、カウンセリング心理士会は社会貢献(災害支援・スクールカウンセリング・ジェンダーやマイノリティ支援・カウンセラー教育等)を行うために新たに渉外委員会を設けました。相互研究(研修)会についても協議を重ねながらより多くの方々に参加していただけるような場にしていきたいと考えています。
  日本カウンセリング学会カウンセリング心理士会会則の第3条(目的)には、「本会は、日本カウンセリング学会でカウンセリング心理士の資格を取得した者が、さらにカウンセラーとしての資質の向上をめざすために相互交流をはかり、互いに親睦と啓発を進め、会員の権益を守るとともに、本会の活動を通して社会に貢献することを目的とする。」とあります。
 まず、自らが出来ることを共に考え取り組んでいきましょう。最近は、「自利利他」という言葉が常に浮かびます。誰かのためではなく、誰かとともに行うこと、そして日々を過ごす中で貢献することが出来ればと考えます。
 カウンセリング心理士の皆さま、共に学び、取り組みを進めていきましょう。そして、日々の積み重ねを共有することが出来ればと願っています。

コメントは受け付けていません。