会長挨拶

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巻頭言

21世紀の認定カウンセラー

小林正幸(東京学芸大学)

Ⅰ 21世紀のカウンセリング

_21世紀になり、北米、英国、カナダなどカウンセリング学会での学会名は変更され、カウンセリングの定義は変更されている。
_まず、イギリス・カウンセリング学会は、2000年にカウンセリングと心理療法の共通性に関心をもつ専門家を統合し、英国カウンセリングおよび心理療法学会(BACP)として再出発した。そこで目標としたものは「Talking Therapy(語りによる治療)という大きな傘の下で、訓練された専門家によって行われる効果的な変化や健康な生活の増進をもたらす短期、または長期の支援」であるとしている。
_続いて、アメリカ・カウンセリング学会(ACA)は、2010年、「カウンセリングとは、メンタルヘルス、ウェルネス、教育、そしてキャリア目標を達成するために多様な個人、家族、グループをエンパワーする専門的な関係」との定義を採択した。
_一方、カナダ・カウンセリング学会は、2009年、会員に心理療法家を包含し、カナダ・カウンセリングおよび心理療法学会(CCPA)に名称を変えた。そして、2011年には、カウンセリングを「人間の変化を促進するために特定の専門的能力を倫理的に活用することを基盤とした関係のプロセスである」と定義した。そして、「カウンセリングは、ウェルネス、関係、個人の成長、キャリア発達、メンタルヘルス、そして心理的疾病または苦悩に対応する」と活用領域を示している。
_このように、この欧米の主要3学会は、カウンセリングを、「心理的苦悩(illness)からの回復を含めて日常の心理的問題の解決と自己の生き方(wellness)の増進とエンパワーメントまでを包括する専門的な支援関係」として位置付けている。その使命を専門性の追求と社会への貢献とし、さまざまな心理的支援を結びつける共通点を探って目標の統一を図ろうとしている。心理療法であろうが、医療、福祉、産業、教育であろうが、関係性に生きる人間、社会的に形成される人間の認知を重視する取り組みを結びつける方向を目指している。
_心理療法は対立概念ではなく、カウンセリングは心理療法を含むようになったのである。とはいえ、問題や疾病が回復するだけではカウンセリングは不十分である。原点復帰に留まってはならない。その後の人生、自ら生きたい方向により自分らしく生きられるように、個々人が人生の主人公となって、自分の人生を創出していけるようになるのを、専門的な関係性の中で支援するのがカウンセリングなのである。

Ⅱ 21世紀のカウンセラーが学ぶべきこと

_先に示したカウンセリングを実現するために21世紀の認定カウンセラーが学んでおくべきことを以下に簡潔に示すことにしたい。

1.専門的人間観・職業観の育成と確立
_21世紀の認定カウンセラーに求められるものは、カウンセラー自身がカウンセリングを行う上で、カウンセラーとは何をなすもので、何のためにカウンセリングを用いるのか、自身はどのようなカウンセラーであるべきかを吟味し続ける必要がある。これを通して、認定カウンセラーとしての人間観、職業観を確立し、絶えず自己研鑽し、カウンセラーとしての必要な動機とアイデンティティを形成、確立、保持する必要があろう。

2.人間の成長・発達や心理的健康の醸成に関わる理論と自己の成長・発達の吟味
_従来の行動や意識の変容に有用な各種カウンセリング理論に加えて、人間の成長・発達や心理的健康の醸成に関わる理論を学ぶと共に、自己理解を進めながら、自身の成長・発達を意識する力が求められる。具体的には、「生涯発達の理論」「キャリアカウンセリング」などに関わることである。
_また、「カウンセリングプロセス理論」、「援助関係」や「ウェルネス育成に関わる理論」は、21世紀のカウンセリングの核となる理論で、これが強調される必要がある。

3.カウンセリング理論の統合
_さらに、これらのカウンセリング理論を並列に学ぶのではなく、各カウンセリング理論を学ぶ際に、個々に異なるカウンセリング理論を、自分の中に取り入れ、活用できる理論として「統合」するようにしたい。この作業は、カウンセラーの成長とアイデンティティの確立にとって欠かせない。各カウンセリング理論を横糸とし、個々人が自ら結び統合できるような縦糸を設け、結び合わせることで、認定カウンセラーの専門職としてのアイデンティティが確立できるのである。

4.グループ・カウンセリング重視
_次に、グループを扱う理論と方法と、グループ体験が重要である。理論としては、集団力学、集団カウンセリングの知識と技術のみならず、ファシリテ-ションやリーダーシップの理論と体験が、認定カウンセラーには求められる。なぜなら、広く問題の未然防止やこころの健康増進に関わる以上、多くの者を対象に、啓発や教育を的確に行える技量が培われる必要があるからである。

5.質の高いスーパービジョン体験
_スーパービジョンは、カウンセリング、アドバイス、コーチング、メンターリングなどを通して、より経験の少ない者が、より経験のある者から、専門家としての技能を高めるための評価的な上下関係のことである。
_スーパービジョンで、とくに、カウンセラーが学び、獲得すべきなのは、大別すれば「カウンセリング技能の実行能力」と「内省する力」である。とくに「内省する力」は重要で、たとえば、自身の感情や思考や行動への気づき、他者の感情や思考や行動への気づき、自他との関係への気づき、専門性への自信の獲得、自立志向性であり、自他を尊重する力である。
_これを実現するために、認定スーパーバイザーは、各カウンセリング理論に共通する理論、スーパーバイザーの役割や務め、評価体系などを定めねばならない。また、育てるべき理想のカウンセラー像を共有し、カウンセラーの適格性についても共通認識を持たねばならない。この辺りは、認定スーパーバイザーたちが協議し、一定の方向性を定める必要があろう。そこで示されることこそが、認定カウンセラーが学ぶべきことの中核になるであろう。
_以上を通して、21世紀に相応しい認定カウンセラーが養成され、わが国の社会に貢献していくことを願って止まないのである。

 

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